近年、中国政府によるビザ免除やトランジット緩和措置などの施策が進められたことにより、外国人観光客の訪中が急増している。2024年には前年比約79%増の9,462.8万人に達し、そのうち日本や韓国からの旅行者の回復が顕著である。
この前、公式メディアの報道によると、韓国からの訪中旅行者数は前年比115.6%増の231万人となり、特に韓国人観光客にとって最も人気のある都市は上海だった。一方、日本人の訪中も再び勢いを取り戻しつつあり、2019年12月の統計では、上海における日本人観光客数が月間約9.1万人に上っていた。さらに、2024年の中国におけるインバウンド観光支出総額は約942億ドル(約14.8兆円)に達し、前年から実に78%以上も増加している。
こうした背景のもと、上海は東アジアの観光客にとって、単なる観光地を超えた「文化体験と消費の複合地」として注目されている。観光を楽しむだけでなく、「その土地ならではの記憶を形にして持ち帰りたい」という動気持ちから、現地の伝統工芸やローカルグルメ、都市モチーフの雑貨などへの関心が高まっている。
「旅の思い出をその土地らしい形で残したい」という気持ちから、日本人観光客の多くは、地域特有の工芸品や食文化、雑貨に魅力を感じている。たとえば、上海伝統の刺繍技術を活かした顧繍や、現代的にリデザインされた旗袍(チャイナドレス)は、「一点物」の希少性から日本人や現地のファッション愛好家の間で高い評価を受けており、旅行情報サイトでも「日本人旅行者に人気」として紹介されている。
また、田子坊で販売されている手作り香嚢は、「漢方の優しい香りに癒される」として、口コミサイトやSNSで頻繁に取り上げられており、お土産としても高い支持を集めている。さらに、中国の藍染文化を代表する藍印花布製品は、落ち着いた藍色と高い耐久性が特徴で、リピーター旅行者の間でも人気が高く、「テーブルクロスやポーチとして使いやすい」「部屋が一気に上海っぽくなる」といった感想がSNSでしばしば見受けられる。
さらに、上海土産として定番の菓子類も根強い支持を得ている。たとえば、大白兎ミルクキャンディは、日本の食系SNSで「見た目が可愛い」「味が本格的」と紹介されており、1928年創業の老舗「蜂花」の檀香石鹸も、レトロなパッケージとノスタルジックな香りで話題となっている。さらに1955年創業の「上海牌時計」の復古モデルは、「現地で数万円で買えるクラシカルな機械式時計」として、ショッピングブログで紹介され、日本人の間で密かな人気を集めている。
なかでも、上海・南翔発祥の「南翔小籠包」は、「食」の記憶を代表する存在だ。1900年創業の老舗「南翔饅頭店」が提供する小籠包は、極薄の皮とジューシーな肉汁が特徴で、豫園店には連日長蛇の列ができるほどの人気を誇っている。Googleマップのレビューでも「毎日行列ができるほどの人気」「皮が薄くてスープが溢れる」といったコメントが多数見られ、日本人ユーザーによる高評価が目立っている。また、Instagramでも「#南翔小籠包」での投稿が数多くあり、日本語の食レポ動画や写真付きレビューが頻繁にシェアされている。日本国内でも、六本木ヒルズや舞浜などに支店が展開され、「3種小籠包セット」が大ヒットするなど、現地の味が日本でも共感を呼んでいる。
南翔小籠包は単なるグルメの枠を超え、日本人観光客にとって「上海を味わう体験そのもの」として強く記憶に刻まれている。旅の記憶を「もの」だけでなく「味」としても残したいというニーズに応える存在であり、多くの旅行者にとって心に残る上海らしさの象徴となっているのだ。
本稿では、特に日本人旅行者に人気のある9種類の「上海ならではのアイテム」を取り上げ、それぞれの文化的背景と魅力を多角的に掘り下げていく。そうした品々は、上海の歴史や情緒を日常生活に取り入れる手がかりとなり、旅の記憶をより鮮やかに、そして長く残す存在となっている。
1.上海絨毯
上海の特色ある伝統工芸品の中でも、「上海絨毯(ベルベット刺繍)」は、日本人にとってぜひ手に取ってほしい逸品だ。上海絨毯は19世紀末に上海で誕生し、色鮮やかな羊毛糸を特殊な網目の布地に刺繍して模様を表現する。その作品は油絵のような質感と刺繍の繊細さを兼ね備える。複雑な手仕事の工芸品に親しみを感じる日本人にとって、上海絨毯の魅力は抗いがたいものがある。額に収められた絨毯アートは、いきいきとした構図と調和の取れた色彩が魅力であり、和風の空間に飾れば、上品な佇まいの中に独自の芸術的な趣を添えてくれる。
また、絨毯生地のクッションは実用性に優れる一方で、その精緻な模様がソファの上で美しいアクセントとなる。これらの絨毯製品は、日本人の生活品質へのこだわりに合致するだけでなく、「上海製」の独自性を示しており、お土産としても高い識別性を持つ。受け取った人に上海ならではの工芸の魅力を感じさせることだろう。
2.香嚢
上海の香嚢(こうのう)もまた日本人に人気がある。上海の香嚢は地元の特色を取り入れており、蘇州刺繍や緙絲(きらずい)などの技法を用いて袋の表面を装飾する。模様には、上海市の花である白玉蘭や外灘の風景などが多く用いられ、上海らしさが色濃く表れている。袋の中には艾草(ヨモギ)、薄荷、檀香などの香料が入っており、清新で自然な香りを放つ。香道文化への理解や愛着がある日本人にとって、このような香嚢は車内や室内の香り付けとして役立つだけでなく、精巧な工芸と上海らしい要素を持ち合わせているため、実用性と記念的な価値がある。玄関に掛けたり、タンスに入れたりすれば、ほのかに広がる香りの中で、再び上海特有の魅力を感じることができるのである。
3. 顧繍
顧繍(こしゅう)は上海地域を代表する伝統刺繍工芸であり、日本人の注目を集めている。顧秀は技法が精巧で色彩が上品であることから、「絵刺繍」とも呼ばれている。日本の刺子と比べ、顧秀は書画の意境の再現により重点を置いており、一針一糸に刺繍職人の思いが込められている。扇面やハンカチなどの小物刺繍品は仕上げが精巧で、模様も雅である。扇面を広げれば、山水や花鳥が紙の上でいきいきと舞い踊るように感じられ、中国伝統書画の奥深い趣きを堪能できる。ハンカチの刺繍模様は繊細で、淡く美しい東洋美学を醸し出している。これらの小物刺繍品は持ち運びが容易で、深い文化的底蘊を備えているため、東洋美学に惹かれる日本人の収集欲を満たすものである。自宅のショーケースに飾り、時折鑑賞すれば、上海での美しい時間を思い出すことだろう。
4. 藍印花布製品
上海の特色ある衣類や織物の中でも、藍印花布製品は独特の魅力を放っている。これは上海周辺地域で伝承されてきた染色工芸に基づいており、青と白のコントラストが江南水郷の清らかな風情を表現すると同時に、上海の古い路地裏に見られることから、都市的な記憶も刻まれている。藍印花布を用いて作られた頭巾、エプロン、手提げ袋などは素朴な風合いと高い実用性を兼ね備えている。日本の藍染め製品と比較すると、上海の藍印花布は共通の起源を持ちながらも、それぞれ異なる美意識と技法を発展させており、いずれも東洋の染織文化の精髄を体現している。東洋の染織文化に深い探究心を抱く日本人にとって、これらの藍印花布製品を手に取ることは、興味を満たすだけでなく、上海の清らかで懐かしい風情を日本へと持ち帰ることにもなる。
いが込められている。扇面やハンカチなどの小物刺繍品は仕上げが精巧で、模様も雅である。扇面を広げれば、山水や花鳥が紙の上でいきいきと舞い踊るように感じられ、中国伝統書画の奥深い趣きを堪能できる。ハンカチの刺繍模様は繊細で、淡く美しい東洋美学を醸し出している。これらの小物刺繍品は持ち運びが容易で、深い文化的底蘊を備えているため、東洋美学に惹かれる日本人の収集欲を満たすものである。自宅のショーケースに飾り、時折鑑賞すれば、上海での美しい時間を思い出すことだろう。
5. 龍鳳旗袍
龍鳳旗袍の改良版も、日本の女性たちに長く愛されている。上海の老舗旗袍ブランドである龍鳳旗袍の「海派改良版」は、現代的な体型によりフィットするようデザインされており、ウエストのシェイプやスリットの挿入など、西洋的な裁断技法を取り入れている。旗袍がもつ東洋的な魅力は日本の女性に強く支持されており、龍鳳旗袍ならではの上海風ボタン工芸——たとえば「一字扣」や「琵琶扣」などの細工も、彼女たちの心をさらに惹きつける要素となっている。このような旗袍を身にまとうことで、東洋の女性が持つ優雅な気質を表現できるだけでなく、ブランドロゴによって「上海オーダーメイド」という明確なアイデンティティも示され、あらゆるシーンで注目を集めることだろう。
6. 蜂花檀香皂
上海の老舗による実用品もまた、日本人の購買欲を刺激している。蜂花檀香皂は、上海家化が手がけるクラシックな製品であり、濃厚な檀香の香りと高いコストパフォーマンスで広く知られている。何世代にもわたって上海人の生活の記憶を支えてきた存在である。日本人は日常生活における細部の「儀式感」を大切にしており、蜂花檀香皂のレトロなパッケージは懐かしさを誘い、その天然由来の香りは入浴のひとときをよりリラックスした、快適な時間へと導いてくれる。日本の和歌山産の石けんと比べても、蜂花檀香皂は独特の「上海の風味」を持っており、日常使いに適しているだけでなく、「上海のライフスタイル」の縮図として日本に持ち帰ることができる。浴室に置いておけば、使うたびに上海で過ごした様々な思い出がふと蘇ってくるのである。
7.上海牌時計
上海牌時計の復古モデルも、日本人の間で高い人気を誇っている。1955年に誕生した上海牌時計の復刻版は、機械式の文字盤デザインにおいて中西の計時美学を融合させており、「大三針」の造形に梅花のインデックスを組み合わせることで、独特の「海派」風格を表現している。日本人は復古的な工業デザインに対して強い収集欲を抱いており、上海牌時計の「中国製造+上海ブランド」という明確なアイデンティティは、漠然とした「中国の時計」よりもはるかに高い記念価値を持っている。このような時計を収集したり手首にはめたりすることで、日本人は単に時間を知るだけでなく、上海という都市の歴史とその移り変わりを静かに感じ取ることができるのである。
8. 上海の地元ならではの特色食品
01 沈大成
上海の地元ならではの特色食品も、日本人の食欲をそそる。沈大成の菓子は上海の百年老舗を代表するお菓子だ。日本人にとって、上海の日常的な甘味を味わう際の第一の選択肢となっている。双醸団、条頭糕、桂花糖藕などは、いずれももち米が原料で、江南の甘味と上海本帮料理の風味を融合させている。日本の和菓子と比較すると、沈大成の菓子は素材本来の味と手作り感がより際立っている。一つひとつが職人の丁寧な手作業によって作られており、食感はもちもちとして、甘さも上品で後味がすっきりしている。また、個別包装なのでばらまきお菓子にぴったり。日本人が沈大成の菓子を購入するのは、その美味しさを楽しむだけでなく、上海の日常の生活感を感じ、この独特な甘味を日本に持ち帰り、家族と共有したいと考えるからである。
02 南翔小籠包
南翔小籠包は上海城隍廟にある南翔饅頭店の看板料理で、「中華饅頭」を好む日本人にとっては必ず味わうべき一品である。その場で作られた小籠包を日本へ持ち帰るのは難しいが、真空パックでも皮の食感や餡の新鮮さが保たれている。日本人は中華料理、特に饅頭のような点心類に特別な愛着を持っており、おみやげ用の冷凍パックの小籠包を使えば、自宅でも城隍廟の本場の味を手軽に再現できる。小籠包を蒸すたびに馴染みのある香りが広がり、まるで上海の城隍廟の賑わいや活気を再び味わっているような気分になるのだ。さらに、「南翔」や「城隍廟」のロゴが印刷されたパッケージも、上海の記憶をより鮮やかに呼び起こし、この食品にさらなる特別な意味を与えているのである。
03 大白兎奶糖
大白兎奶糖は上海で誕生した国民的なキャンディである。近年では、外灘や東方明珠塔など上海を象徴するランドマークをデザインした限定版が人気を集め、ネット上で話題となっている。日本人は昔ながらのお菓子に興味を持ち、大白兎奶糖も多くの人々の子供時代の思い出を象徴している。このように懐かしさと地域的特色を併せ持つお菓子は、日本人にとっても大きな魅力を感じさせる。限定版の大白兎奶糖は子供の頃の味覚を思い起こさせるだけでなく、その特別なパッケージデザインもコレクションとしての価値を高めている。人々はこれらのキャンディを大切に集めたり、友人との集まりで分け合ったりして、上海のランドマークや自身の上海旅行の経験を語り合うことができるのである。
9.クリエイティブアイテム
上海のクリエイティブアイテムや都市モチーフの雑貨は、その都市ならではの個性や魅力を余すところなく映し出している。なかでも、上海を象徴する伝統的な住居建築「石庫門」をテーマにしたアイテムは、日本人旅行者の心をとらえて離さない。石庫門の意匠を取り入れた冷蔵庫マグネットやノート、キーホルダーなどは、単なるお土産を超えた、生活に溶け込む文化のかけらだ。日本人は都市建築やその背景にある暮らしの文化に強い興味を持っており、東洋と西洋の様式が融合した石庫門の独自性は、京都の町家と重ね合わせて眺める楽しさもある。例えば、石庫門の扉を模した冷蔵庫マグネットは、日常の中でふと目に入るたびに、上海の路地裏に広がる昔ながらの風景を思い起こさせてくれる。また、石庫門のイラストがあしらわれたノートに日々の記録を綴れば、文字の行間に、どこか懐かしい上海の生活の気配が漂うことだろう。これらのグッズは、単なる記念品ではない。「上海の記憶」を視覚や手触りとして直感的に持ち帰ることのできる存在であり、日本人にとって、上海という都市と感情的なつながりを育むきっかけとなっている。
また、外灘をモチーフにした関連アイテムも、日本人旅行者の間で高い人気を集めている。万国建築群をテーマに煌めく夜景が美しくプリントされたスカーフ、古い外灘のポスターを復刻したアートパネル、東方明珠塔の形を模した金属製のしおりなど、いずれのアイテムも上海らしさにあふれている。都市のランドマークを記念として形に残したい日本人旅行者にとって、外灘のように象徴的で印象深い場所は、まさに「旅の証」となる存在だ。こうしたアイテムは旅の思い出を視覚的に再現するだけでなく、上海という都市とのつながりを身近に感じさせてくれるのだ。
要するに、これら上海の特色を備えた品々は、その独特の魅力によって上海を訪れる日本人を惹きつけている。それらは単なる買い物の成果にとどまらず、外灘の賑わい、路地裏の風情、そして海派の匠の精神を映し出す文化的な媒体でもある。日本人はこれらの品物を通じて、「上海の記憶」を具体的な形で日常生活に持ち帰っているのだ。
これらの品々を目にするたびに、上海のさまざまな情景が心に浮かび、一生忘れられない思い出として刻まれていく。そしてまた、こうした物品は目に見えぬかたちで中日両国の文化交流を促進し、より多くの人々に上海というユニークな都市への理解と愛着を育ませているのである。