手書きレシピから始まる上海の旅――宋慶齢の足跡をたどる「追光」サイクリング
9月28日午後、上海宋慶齢故居記念館でスタートセレモニーが行われた.来賓がパンや牛乳、卵、野菜、果物などの健康的な食材を一つずつ並べ、手書きのレシピをもとにした「軽食(ライトミール)メニュー」を完成させた.これを皮切りに、淮海中路1843号を起点とする健康サイクリングがスタートした.
イベントは上海市孫中山宋慶齢文物管理委員会と上海報業グループの指導のもと、上海宋慶齢故居記念館が主催し、上海新華発行グループが運営を担う.コンセプトは「軽騎・軽食・軽享(軽やかに走り、ヘルシーに食べ、心地よく楽しむ)」.サイクリングを通じて衡復風貌区(衡山路・復興路歴史文化風貌区.上海市中心部を代表する歴史文化地区で、歴史的建築物や街並みが数多く残されている)を巡り、歴史や文化と現代の健康的なライフスタイルを結びつけていく.
館蔵の手書き資料からひも解く「軽やかな出発」
2026年は、宋慶齢の逝去から45年にあたる.日々の暮らしを大切にした宋慶齢は、健康にも気を配っていた.旧居が所蔵する手書きレシピの一頁には、「8 weeks plus daily exercise(8週間、毎日運動を続ける)」と書き残されている.食生活に気を配り、運動を欠かさなかった彼女の暮らしぶりを伝えるこの記述が、今回のイベントの着想につながった.
「1843」は旧居の所在地にちなんだ数字だ.「軽やかな出発」には、宋慶齢の暮らしの知恵を現代の都市生活にも生かしてほしいという思いが込められている.健やかな暮らしに、難しいことは必要ない.自転車に乗ること、軽い食事を楽しむこと、街を歩くこと――その一つひとつが、新たな始まりになる.
昨年の「追光・宋慶齢の『友人の輪』を訪ねて」が、宋慶齢と国内外の友人との交流に焦点を当てたのに対し、今年は宋慶齢の日常生活に目を向ける.Eat Well, Ride Well, Live Well――今回のイベントが提案するのは、そんな健やかなライフスタイルだ.
文物を道しるべに、光を追う――宋慶齢と上海の街の記憶をたどる
淮海中路1843号は、宋慶齢が「愛すべきわが家」と呼んだ場所であり、宋慶齢を理解・研究するうえで重要な歴史・文化的拠点でもある.今回のライドは、単に立ち寄り先を巡るだけのものではない.館蔵の文物や研究成果をもとに、展示ケースに収められた文物が伝える記憶を、上海の街の中でたどっていく.街の風景と館蔵資料が重なり合い、宋慶齢ゆかりの歴史を浮かび上がらせる.
スタートセレモニーの後、参加者は記念館を出発し、黄興旧居に立ち寄った後、武康路観光案内所へ向かった.黄興は辛亥革命の先駆者であり、孫文の革命の同志でもあった.宋慶齢にとっても、孫文と黄興が肩を並べて中国のために尽力した時代は、自身の人生と深く関わる歴史だった.黄興の逝去に際しては、孫文に同行して弔問に訪れた.この出来事もまた、上海近代史の一頁として刻まれている.
サイクリングが始まり、参加者は衡復風貌区へ向かった.復興西路、永福路を走り、途中で柯霊旧居や上海電影製片廠に立ち寄った.
作家の柯霊夫妻は、復興西路147号で半世紀近く暮らした.旧居には、約80年前の記念帳が所蔵されている.表紙には「推誠致敬」と記され、落款には中華全国文芸協会の名が残されている.冊子には、柯霊本人の直筆署名も残されている.そこに残された一筆が、時を超えた文壇の交流を今に伝えている.
上海電影製片廠に到着すると、サイクリングは「光と影」の物語へと続いていく.宋慶齢は生涯、映画をこよなく愛し、中国映画の発展を支えた.抗日戦争期には、映画の慈善上映を通じて反ファシズムや民族解放の理念を広める活動にも取り組んだ.中国福利基金会の活動を率いていた時期には、映画を活用した活動を通じて募金を集め、困難な状況にある子どもたちを支援した.中華人民共和国の建国後も国産映画の創作に関心を寄せ続け、文芸界との交流をめぐる数々のエピソードが残されている.
参加者は五原路を進み、張楽平旧居を訪れた.館内には「三毛楽園会」の記念バッジが収蔵されている.
抗日戦争勝利後、上海では路上で暮らす子どもたちが急増した.宋慶齢は中国福利基金会を通じ、漫画家の張楽平とともに「三毛楽園会」を立ち上げ、原画展やチャリティー販売会を通じて資金を集めた.張楽平は記念バッジをデザインし、三毛のように貧しい境遇にある子どもたちに手を差し伸べるよう、社会に支援を呼びかけた.
手書きレシピ、署名入りの記念帳、「三毛楽園会」の記念バッジ――一つひとつの文物が、上海を読み解く新たな手がかりとなる.
このルートが結ぶのは、個々のランドマークだけではない.上海に根を下ろし、国家と人々を思い続けた宋慶齢の足跡、そして彼女とこの街との長く深い結びつきである.
2か月にわたるオンラインリレーで、「軽やかな出発」を日常へ
オフラインでのスタートは、あくまで始まりにすぎない.イベントは11月28日まで続く.市民は哈啰(ハロー)のアプリやミニアプリからオンラインのライドチャレンジに参加し、3キロ、5キロ、8キロのコースから選べる.各コースを完走すると、記念館のマスコット猫「小黒(シャオヘイ)」をモチーフにした「軽啓」銅メダル、「軽行」銀メダル、「軽至」金メダルのデジタルバッジをそれぞれ獲得でき、さらに抽選にも参加できる.
イベントが提案するのは、日常に取り入れやすい健康的なライフスタイルだ.特別な日を待つ必要はない.自転車に乗ることから、「軽やかな出発」は始まる.
「友人の輪」から「健康との約束」へ――「追光」が見つめる上海
「追光」プロジェクトは2025年に始まった.昨年はサイクリングで革命ゆかりのスポットを巡り、若者にも親しみやすい形で歴史に触れる機会をつくった.2026年は宋慶齢の日常の暮らしに目を向け、歴史文化と現代の都市生活を結ぶ新たな接点を模索する.
今回の取り組みは、文化、商業、観光、スポーツ、MICEを組み合わせた上海の取り組みとも重なる.記念館は文物研究や社会教育の役割を生かし、新華文創はコンテンツの企画・発信を担う.両者が連携することで、歴史をより身近に感じられる都市文化体験を生み出し、現代の視点から宋慶齢の生涯や人柄に触れる機会を提供する.
一つの旧居から街全体へ、一つの館蔵資料から一人ひとりの暮らしへ.イベントは「食事は節度を、運動は習慣を」という生活の知恵を伝えるだけでなく、現代の視点から宋慶齢の物語をより身近な形で伝え、その生き方や価値観を現代の暮らしへとつないでいく.
「追光」とは、歴史の光を振り返ることであり、同時にそこから新たな時代の魅力を見つけ出すことでもある.




