嫦娥、月へ上る

by 曹俊
September 29, 2023
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中秋節の大きな月は中国の無数の家族団らんを物語るだけでなく、羿と嫦娥という仲の良い夫婦の不幸な別れも見つめている。

高くそびえる崑崙山には神々が住んでいた。そこは千里の若水に取り囲まれ、燃え盛る燕山によって遮られていた。

羿は謎に対する答えを得ようと、あらゆる災難や邪悪な怪物を司る西王母に会うために神山に向かった。

燕山の大火は永遠に燃えていて、若水の河は1枚の羽根さえ運ぶことができない。羿が西王母の住む崑崙山上の石の館に行くにはどうすればいいだろうか。

羿は絹の一部を矢の端に縛り付け、もう一方の端を腕に縛って、渾身の力で弓を引いた。絹はぴんと張り、羿は弓を持ったまま全速で空へ飛びあがった。そして曲がりくねった若水を越え、燕山の炎を通り抜けた。翡翠色の3羽の鳥たちは燕山の火雲の中を羿と肩を並べて飛び、楽しそうに歌っている。小鳥たちは西王母の使者で、羿を石の館に連れて行った。

西王母は眩いばかりの金箔の衣装に包まれ、優雅に座っていた。

800歳を過ぎてもなお、西王母の玉のような白い顔は光り輝いていた。

毎日朝と晩、西王母はその虎の牙と豹の尾を現す。そして、髪を振り乱して山頂で咆哮し、妖獣の妖霊どもを威嚇するのだ。

西王母は羿を虎のひげでできた席に座らせ、ナツメと桃を与えた。

羿は西王母に尋ねた。「獰猛な妖怪が始末され、9つの太陽が射られたが、人間の災いは依然として残っている。どうすれば災いを未然に防ぐことができるだろう。人間があなたのように不老不死になるにはどうすればいいのだろうか」。

これに対して西王母は、「毎日毎日、太陽は東から昇り西へ落ちる。毎年毎年、植物は春に盛んに成長し冬に枯れる」と答えた。

そして、「そなたの目が特定の何かにとらわれなければ、世界のすべては不滅である。人間もそうだ。これらの災害と苦難を経験していてもなお、人間は地上で繁栄しているではないか」と言った。

羿は突然顔を輝かせ、「分かりました!」と言った。

さらに西王母は、「個々の命も永遠に生き続ける方法はある」と付け加えた。「伏羲、女娲、神農、黄帝、尭、舜を見よ。彼らの行いと人間への貢献は永遠に銘記され、彼らを永遠に存在させておろう」。

「だが、仙丹もある。そなたの優れた貢献と人間への思いやりに鑑み、特別にこれを授けよう」と述べた。そしてそっと手を上げると、空から3粒の薬を羿に渡した。

羿は西王母に心からの感謝を述べ、崑崙山を後にした。

家に帰った後、羿は真夜中に月を見上げ、「満月の夜にこれを飲めば不老不死になる」という、西王母の言葉を思い出した。

永遠の命を望まない者がいるだろうか。しかし、羿はすぐにこの考えを打ち消した。もし自分が天に行ってしまったら、誰が人々のために悪と戦うだろう。それに、妻の嫦娥を一人地上に残すことなどできようか。こうして羿は残ることに決め、祭壇の上に置いた精緻な木箱に仙丹をしまった。

羿の部下の一人である逢蒙は、仙丹の存在を知るとこれを盗もうと企てた。

旧暦8月15日の夜、羿と弟子たちが外出したすきに、逢蒙は羿の家に侵入した。そして仙丹を渡すよう、嫦娥に迫った。逢蒙が戸棚や箱をひっくり返しているすきに、嫦娥は祭壇の箱に駆け寄り、強欲な奴に渡してなるものかと仙丹を飲み込んでしまった。

自分に何が起きているのかも分からないうちに、嫦娥の体は羽のように漂い、窓の外に飛び出すと、月に向かって真っすぐ上って行った。

羿が戻った時、嫦娥の姿はどこにもなかった。ただ、祭壇の上に空になった箱があるばかり。羿は家の外に飛び出すと、空にかかっている明るい満月を見上げた。月には宮殿と木があって、そこには悲しそうに彼を見ている妻がいた。

羿は弓に矢をかけ、月に向けて妻を救おうとした。しかし、矢を放つ前に月が震えていることに気づき、理性を取り戻した。自分の愛を取り戻すために、人々から月の輝きを奪っても本当にいいのか。

彼は手にした弓矢を下ろすと、月の広寒宮に立つおぼろげな嫦娥の姿を見つめた。

宮殿には嫦娥の他に人影はなく、翡翠の兎が1匹付き添うばかり。兎は嫦娥のために薬材を搗き続け、いつの日か彼らが嫦娥を帰してくれる妙薬を見つけ出してくれることを願っている。

他の伝説では、嫦娥が巨大な月桂樹の前に行って、広寒宮に住む呉剛という人と話をする。

呉は仙人になる修行中に大きな過ちを犯したため、昼も夜も宮中の月桂樹を伐らなければならないという罰を受けていた。

月桂樹を切り倒した日に、呉は永遠の命が約束されることになっていた。しかし、月桂樹は伐っても伐ってもすぐに再生し、呉のすべては無駄になってしまうのだった。嫦娥はこれを見て、とても悲しんだ。

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