上海で出会う「第二のふるさとの味」

by 王文彦、美新
May 23, 2025
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現在、上海市内には4,000軒を超える日本食レストランが存在し、とりわけ長寧(チャンニン)区に集中している。上海で暮らす日本人にとって、長寧区は単なる生活の場ではなく、「第二の日本」として感じられる場所。古北や虹橋の街角には寿司屋、ラーメン店、居酒屋、家庭的な弁当屋から高級懐石料理まで、さまざまな店があり、ふとした瞬間に「ふるさとの味」を思い出させる。これほど幅広い業態の店があるのは、日中の経済交流と生活文化の融合が進んだ結果ともいえる。

上海・七宝領展プラザの日本料理店で、シェフが客へ料理を提供している

上海日本食の30年——特別な味から日常の選択肢へ

1990年代初頭、日本企業の進出に伴い、日本人駐在員やその家族が虹橋や古北エリアに定住し始めたことで、日本食文化が上海に根付き始めた。当時、日本食は花園飯店やウェスティンホテルなど限られた高級ホテル内にしかなく、ごく一部の人々だけが触れられる特別な存在だった。

しかし、在中の日本人料理人の活躍や現地スタッフの育成により、日本食は徐々に街中へと広がっていった。中産階級の拡大と消費スタイルの多様化、そして対外開放の進展が後押しとなり、日本食は“特別な料理”から“日常の選択肢”へと変化した。

特に「食べ放題」の登場は大きな転機となった。高額で量が少ないという従来のイメージを打ち破り、幅広い層に受け入れられた。

長寧区

試練と再構築

2023年の福島第一原発処理水放出による日本産水産物の輸入停止措置は、上海の日本食業界に深刻な打撃を与えた。高級店の多くが閉店または業態転換を余儀なくされ、輸入原材料も一時的にストップがかかった。消費者の不安も広がり、一部では「日本食を避ける」動きも見られた。

だが、中国国内の広大な海域と豊富な水産資源が強みとなり、現地調達による供給体制の再構築が進んだ。東シナ海や南シナ海から仕入れた魚介類は品質においても劣りなく、多くの料理長が「日本産と変わらない」と評価している。

往来の回復と市場の再活性化

2024年、中国政府は日本を含む複数国に対する短期滞在ビザの免除政策を導入。滞在期間も15日から30日に延長され、日中間の人の往来は大きく前進した。

2025年第一四半期、上海を訪れた日本人旅行者は約14.2万人に達し、前年同期比で約6割の増加となった。それに伴い、日本食レストランの来店客数も回復し、日本の酒類や食品関連企業も再び市場開拓に動き出している。それと同時に、日中当局は水産物の安全性に関する技術協議を進めており、将来的な輸入再開への道筋も模索されている。

国際都市・上海は、文化が混ざり合い、ビジネスが生まれ、人と人との接点が育まれている。寿司カウンターで交わされる会話、居酒屋での笑い声は、単なる食事を超えた民間交流の象徴である。

あるベテランの日本人料理長はこう語った。「上海がより開かれれば、我々も安心してここで生きていける。この街は、すでに“もうひとつのふるさと”になっている」。

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