「乌叉頭」も漫画に!宇山紡さん、『上海絵日暦』の創作秘話を語る
端午節にあたる6月19日、日本人イラストレーターの宇山紡さんによる『上海絵日暦』のトークイベントが、上海市虹口区の「1927・魯迅と内山記念書局」で開催された.宇山さんは、上海人民美術出版社より今年出版された『上海絵日暦』について、12カ月にわたる漫画制作の舞台裏を初めて公開し、上海の古い住宅での暮らしや現地の年中行事、日々の生活の中で見つけた上海らしさについて語った.
会場となった「1927・魯迅と内山記念書局」は、四川北路2020〜2056号に位置し、かつての内山書店跡地を基礎に整備された記念書店である.2022年11月に修復・リニューアルオープンし、旧内山書店跡、旧新華書店山陰路店および周辺空間を改造してつくられた.名称に含まれる「1927」は、魯迅が1927年に上海へ定住した後、内山書店と深い関わりを持ったことに由来する.現在の書局は、書店、記念館、読書スペース、文化展示、カフェ機能を兼ね備え、魯迅の作品、内山完造と魯迅の交流、近代上海における中日文化交流の歴史を紹介する場となっている.また、虹口区の「魯迅小道」や山陰路歴史風貌区を代表する文化的ランドマークの一つでもある.
イベントの冒頭で同書局の店長が来場者に向けて、内山書店旧址の歴史や、「1927・魯迅と内山記念書局」が上海の近現代文化記憶、中日文化交流史の中で持つ意義について紹介した.その後、宇山さんは自身の学生時代から話を始め、中国や上海との縁について語った.
宇山さんは、学生時代に中国出身の親友と出会い、15歳の時にその友人と初めて上海を訪れた.その後、大学進学、日本での就職を経て、やがて上海で暮らすことになった経緯を振り返った.上海は、宇山さんにとって日々の生活を見つめ、創作へとつなげる重要な舞台となっていった.
上海で暮らし始めた宇山さんは、古い住宅に住み、近所の人々との交流や日常の細部を通して、この街への理解を深めていった.洗濯物を干す時に使う道具「撑衣杆」の用途を知ったことや、それが上海語で「乌叉头」と呼ばれていることを知ったエピソードも紹介.古い住宅での暮らし、近所付き合い、異なる文化背景の中で生まれる生活の違いなど、上海の日常に根ざした数々の出来事を、ユーモアを交えて語った.そして上海各地の地域行事や街角にも積極的に足を運んできた.東京周辺の地図と上海の都市空間を重ね合わせるように比較し、二つの都市の似ている点や異なる点を紹介.例えば、上海浦東空港の位置関係を東京近郊の地理感覚に置き換えて説明するなど、来場者の関心を集めた.
『上海絵日暦』の制作について、宇山さんは、上海での暮らしの中で積み重ねてきた観察が作品の出発点になっていると語った.12カ月にわたる制作期間の中で、日常の小さな出来事を漫画として描き出したという.漢字の書き方や理解の違いにも触れ、作品中に登場する文字の表現について来場者とやり取りする場面もあった.
この日は端午節にあたり、宇山さんは端午にまつわる自身の体験も紹介した.上海郊外の羅店でドラゴンボートレースを見学し、その様子を作品に描いたことや、実際にちまき作りを体験したことを語った.ちまきの好みについては、「白米ちまきが一番好き」と笑顔で話し、会場を和ませた.こうした具体的な生活体験は、宇山さんが上海の年中行事や地域文化を理解し、絵で記録していくうえで大切な入り口になっている.さらに、CNS JPと共同で制作した『上海絵日記』についても紹介され、宇山さんが長年にわたり絵を通して上海の暮らしを記録してきた歩みが示された.
来場者からは宇山さんの作品への共感や感想が寄せられた.読者の劉倩雯さんは、2、3年前から宇山さんを知り、小紅書で漫画をよく読んでいたという.上海出身の劉さんは、外国人でありながら上海文化や上海語を深く理解し、それを絵という形で表現できる人は多くないと話す.「外国の方が上海の文化をこれほど愛してくれていることに、とても感動しました」と語った.
また、宇山さんの中学時代からの友人である励姗姗さんも会場を訪れた.励さんは、宇山さんが上海で暮らしながら『上海絵日記』を描き続け、作品を少しずつ描きためてきたことを以前から知っていたという.発表された作品の中には見覚えのある絵も多く、懐かしさとともに、こうして本として出版され、発表会の場で紹介されていることに感動したと話した.「中国人が見れば懐かしく感じ、日本にいる私のように中国をよく知らない人にとっても手に取りやすい.中国と日本をつなぐ架け橋になっている作品だと思います」と語った.
古い住宅で見つけた「乌叉头」から、端午節の白米ちまきやドラゴンボートレースまで、宇山さんは外から来た創作者ならではの視点で上海の日常を見つめ、漫画として記録している.『上海絵日暦』は、上海の暮らしを描いた作品であると同時に、言葉や文化を越えて都市を観察する記録でもある.中日文化交流の記憶を受け継ぐ「1927・魯迅と内山記念書局」で行われた今回のイベントは、作品が描き出す上海の日常と文化のつながりを、より深く感じさせる場となった.




