「買う金」から「身につける文化」へ 中国風ゴールドブームの本質
4月19日、第44回香港電影金像奨の授賞式が行われ、68歳の梁家輝が映画『捕風追影』での演技により、13年ぶりに最優秀主演男優賞を受賞。通算5度目の栄冠に輝いた。
晴れの舞台で梁家輝が身につけた、ひょうたんモチーフの東洋ジュエリーもSNSで話題に。「福」や「守護」を象徴する意匠が、その瞬間に温かみある文化的な彩りを添えた。
近年は金価格の上昇が続く一方で、中国の伝統要素や「古法」技法を取り入れた金アクセサリーの人気はむしろ拡大。若い世代を中心に支持を集め、そのデザイン性や文化的価値、資産性が海外市場にも広がっている。
最優秀主演男優の梁家輝が、中国風のひょうたんモチーフのネックレスを着用。
訪中外国人の買い物リストにも入る中国風ゴールド
今年初めには、テスラのイーロン・マスクCEOの母親が上海で中国伝統の古法金飾を購入する様子がSNSで話題になった。実際、中国風の金製アクセサリーは、すでに茶葉やシルクと並ぶ“中国らしい土産”として、多くの外国人観光客の買い物リストに入っている。
その熱気を象徴しているのが、上海の豫園商圏だ。ロシアから訪れた観光客ダニエル・スタリコフさんは、上海に到着した翌日に金のネックレスを購入したという。中国の金製アクセサリーについて、「とても美しく、細工も見事だ」と話した。
老鳳祥銀楼の旗艦店関係者によると、ここ数年で外国人観光客の購買傾向にははっきりとした変化が見られる。かつてはダイヤモンドに関心を示す人が多かったが、今では龍や鳳凰、十二支、竹模様といった中国の伝統モチーフを取り入れた金のアクセサリーや装飾品を求める人が増えているという。
観光客を引きつけているのは商品そのものだけではない。職人がその場で模様を彫り込み、金銀の線を使って形を作り上げる工程を見学できることも、大きな魅力になっている。
イーロン・マスクCEOの母親が上海で中国伝統の古法金飾を購入する様子がSNSで話題になっ
古法黄金が人気を集める理由
このブームの背景には、主に二つの要因がある。
一つは、金そのものの資産価値が改めて見直されていることだ。世界経済の先行きが不透明になるなかで、金は安全資産としての存在感を増しており、価格上昇も追い風となって、消費者の関心を集めている。
もう一つは、中国伝統の古法黄金そのものの魅力が高まっていることだ。いま消費者が買っているのは、単に重さで評価される金ではない。デザイン、工芸、文化的背景、さらには感情的な満足感まで含めて商品を選んでいる。特に古法黄金は、無形文化遺産にもつながる伝統技法や文様、東洋的な美意識を前面に打ち出しており、金製アクセサリーを婚礼や節目のための装飾品から、日常的に身に着けられるファッションアイテムへと変えつつある。
統計によると、2018年から2023年までの中国の古法黄金市場の年平均成長率は64.6%に達し、一般的な金市場の3.6%を大きく上回った。これは、古法黄金に対する消費者の支持が急速に広がっていることを示している。
中国伝統の「古法黄金」の人気が高まっている
「人生の節目に買う金」から「旅の目的地」へ
注目すべきは、金の専門店巡りが上海観光の目的の一つとなっている点だ。
豫園店の行列には、山東省、徐州、武漢、常州、蘇州など、各地からの旅行者の姿があった。上海観光や出張、乗り継ぎの合間に訪れた人たちが、わざわざ「金の専門店に並ぶ」ことを旅程に組み込んでいる。金の消費シーンそのものが変わってきていることを示している。
かつて金を買うのは、結婚、出産、子どもの誕生祝いなど、人生の節目が中心だった。だが今では、金は日常の装いの一部であり、観光消費の対象であり、さらには自分らしさを表現するアイテムにもなっている。もはや「特別なときだけ買うもの」ではなく、美意識や文化的な共感、さらには資産意識と結びついた新しい消費対象になっているのだ。
金専門店巡りも上海観光の目的となっている
ゴールドブームの本質は、中国の美意識と工芸の再評価
外国人観光客が中国風金飾を“中国らしい贈り物”として持ち帰ることも、中国の若い世代が老鋪黄金を流行のアイテムとして受け入れていることも、表面的には「金ブーム」に見える。だが、その本質は、中国の伝統文化や工芸、美意識が改めて高く評価されていることにある。人々が買っているのは、単なる貴金属としての金だけではない。龍や鳳凰の意匠、古法技法、無形文化遺産につながる手仕事、そして東洋的な美しさといった、金の背後にある文化そのものに価値を見いだしているのである。
金がもはや「重さで買うだけの貴金属」ではなく、文化表現や自己表現の一部として選ばれるようになったとき、中国風の金製アクセサリーが注目を集めるのは、むしろ自然な流れといえるのかもしれない。




